夫さん妻さんキャンペーン ― 2015年11月22日 05:11
夫婦といえば「配偶者」の呼び方が時に悩ましいところです。
私の場合は自分の配偶者のことは「夫」を使います。ですが、時々、年配の方とお話しする時などには「”主人”と言ったほうが印象が柔らかいかな」といったような策略めいた気持ちが頭をよぎることもあります。
とはいえ、自分の配偶者のことは原則「夫」であることは揺らぎません。
問題は「相手の配偶者」のことを話題にする時です。「ご主人」「奥さま」・・・これが一般的ですよね。でも、例えば、相手がご自分の配偶者のことを「夫」と話をしているのに(きっとそこには何かしらの彼女なりのこだわりがあるだろうに)、そこへ「ご主人」というワードを投げ込むのは無粋な気がするのです。それになんだか自分への後ろめたさも感じます。
かといって「配偶者さん」とか「パートナーさん」というのも、とってつけたような、いかにも「私は‟主人”という言葉を使わない主義なんです!」と不要に主張しすぎているような居心地の悪さがあります。
ところで。
近頃、福祉・医療分野において、記録や会議の場で「夫さん」「妻さん」あるいは「夫氏」「妻氏」という表現を見聞きします。
これは、公的な(あるいは中立的な)立場である場や表現媒体において、「主人」「奥さま」といったある種の上下関係をうかがわせる文言は避けて公平な表現を求め、なおかつそこに敬称(っぽいもの)をつけた結果でしょう。
特にそうしようという取り決めがあるわけではなく、自然発生的なものだと思います(が、どうでしょう)。
この「夫さん」「妻さん」という呼び方、これ、一般の会話でも使っていけば良いのではないでしょうか。
今はまだ聞き慣れないのでちょっと落ち着かないかも知れませんが、みんなが使うようになればきっと馴染みます。というか、「彼氏さん」「彼女さん」が当たり前に使われているのですから、その延長線上の表現ですよね。
先日、テレビで観たお笑いのネタ番組で、芸人の厚切りジェイソンさんが「夫さん」「妻さん」という表現を使っていました。
「夫さん」「妻さん」が市民権を得る日も近い!と確信しました。
私は、会議や記録はもちろん、講義中も意識して使いますし、日常の(例えば友人との)会話にも使うようにしています。
使えば使うほどそれが当たり前になります。耳にすればするほど違和感を感じなくなります。
「夫さん」「妻さん」を積極的に使っていきましょう。「夫さん妻さんを当たり前に使おう初めの一歩キャンペーン」開始!
コメント
_ 水本光美(Terumi Mizumoto) ― 2017/08/10 17:23
_ 柳田明子 ― 2017/08/15 21:08
コメントありがとうございます。嬉しく拝見しました。2年前の記事に、水本さまのような「市民権獲得」を願っておられ、そして発信されているお立場の方が目を留めてくださったこと、光栄に存じます。福祉の現場では、今も引き続き「夫+呼称」「妻+呼称」が使われていると感じてます。違和感もなくなってきた気がします。先日は友人からのメールに「ところで夫くんは元気?」とあり、キャンペーンの浸透ぶりを一人密かに喜んでおりました。「孤独に」ではなく、これからはご一緒に喜べると良いなと僭越ながら感じたしだいです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします
_ 水本光美(Terumi Mizumoto) ― 2017/08/16 20:29
こちらこそ、実際に新呼称を日常で使用してらっしゃる分野があることを知り、大変心強く思いました。こちらこそ、今後もどうぞ宜しくお願いいたします。
早速、医療関係に従事している親戚数名に聞いてみたのですが、東京地方の医療関係(看護・薬剤・介護)分野では、聞いたことがないとのこと。
ことばは、地域性も大きく影響するので、もしかしたら一定の地域の特徴?とも思ったのですが、社会福祉分野ではこの動きは全国的でしょうか。
いずれにせよ、まずは自分の周りから同感してくれる人を通して広がっていくといいな、と私も思い、FacebookはじめSNSでも、この呼び方を積極的に使っていこうと思います。
_ 柳田明子 ― 2017/08/17 08:34
再度のコメントありがとうございます。
「夫さん」「妻さん」の福祉分野での呼称使用が全国的かどうか・・・今までそのような視点で考えたこともなく、私の身の周りで感じていたこの現象に「地域性」があるか否かなんて、水本さまに指摘されるまで全く思いもしませんでした。とても興味深いですけれど、お役に立てるお答えができず申し訳ないです。
東京地方の医療関係の方が「聞いたことがない」とおしゃっているとのこと、では公的な会議(例えば自治体主導の介護認定審査会や地域ケア会議など)や公的な記録では、どう表現しているのか気になります。記録では、敬称をつけずに「夫・妻」で良いかと思うのですが、まさか「ご主人」「奥さま」などと記載されているのでしょうか。「夫・妻」なら理解できます。会議の場での表現はどうなのでしょう。 「ご主人」とか「奥さん」という(人によっては差別的と感じられる)文言が当たり前に公的会議で使われているとしたら、そのほうが私には違和感を感じられるのですけれど・・・。
注文していたご著書が届きました。内容は私のとても関心のあるテーマなのですが、何しろ理解能力が乏しいもので、どこまでご研究の成果を咀嚼できるか判りません・・・。とはいえ、読後に、私なりに、上記の「分野」「地域性」も含めて考えをまとめて記事にあげたいと思ってます。
近頃なかなか更新できず、いつまでに書きますとお約束はできませんが、私も頭の中のこの興味深い現象についての考えを整理したい気持ちは高まっておりますので「そう遠くはないいつか」になろうかとは思います。
私に新たな視点をもたらして下さったこと、心から感謝申し上げます。
_ 水本光美(Terumi Mizumoto) ― 2017/09/03 00:32
東京地方の医療界(介護士、美容界、看護師、薬剤師など)数名に確認したところ、口頭でも記録でも「夫さん・妻さん」は使ってないとのことでした。もちろん、記録では「ご主人」「奥さん」も使わず、「〜さんや〜氏をつけてカルテや紹介状、学界発表することはない」ということでした。記録の際には「夫・妻」と記載するとのこと。公的な会議の場でも、同様に「患者A氏の夫」などと言うんでしょうね。
ただ、これはあくまでも公的な場合であり、普通に話す時は、やはり「ご主人/旦那さん」「奥さん」を使うそうです。
でも、これはあくまでも知人数人にしか聞いていないことなので、東京地方全体がそうかどうかは分かりません。
それから、私の本に興味を持って下さってどうも有り難うございます!
専門外の方に読んでいただけるなんてとても嬉しいです。
_ 柳田 ― 2017/09/04 08:17
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ネット検索であなた様の2年ほど前に書かれたこの記事を見つけ嬉しく拝読。
近頃、福祉・医療分野において、記録や会議の場で「夫さん」「妻さん」あるいは「夫氏」「妻氏」という表現を見聞きされるとのこと、嬉しいニュースです。
80年代には既に「夫さん」という呼称を採用する試みがあったにもかかわらず、未だに殆どの人達は「ご主人」「奥さん」を使い、それが「正式である」と説く人の意見がネットにも多数見られます。
こういう状況で、福祉、医療分野でこの新呼称が採用されていることは、日頃からこの呼称の市民権取得を願っている者としては朗報でした。
2010年に、それまで心の中にたまっていた気持ちをジェンダーエッセイとして、ある学会を通して発表し、自分のウェブサイトでも「孤独に」叫んでおりましたが、残念ながら、その後この呼称が社会に受け入れられた実感はありませんでした。
でも、あなた様のキャンペーンをこうして発見して大きな力を得ました。もっともっと、こちらから働きかけをしていく必要があることを再認識しました。
メディアにおいては、2017年のTVドラマ『カルテット』で脚本家の坂本祐二氏が「夫さん」ということばを使用していたことも、一つの意義ある発信だと思いましたし、厚切りジェイソン氏の勇気ある試みが、メディアによってさらに広まっていくことも期待します。
(長文失礼しました)